輝き失ったアップル株、AI製品での出遅れに投資家は我慢の限界
by Bloomberg
米アップルが電気自動車(EV)開発を中止し、そのリソースを人工知能(AI)プロジェクトに振り向けるという決断は、1年前なら投資家を喜ばせていたかもしれない。しかし、アップル株の低迷は深まるばかりだ。
アップル、EV開発計画を白紙に-10年がかりのプロジェクト断念
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は先週の株主総会で、アップルがAIで「新天地を切り開く」と語った。ただ実際のAIへの取り組みについて詳細はほとんど明らかにしていない。投資家はしびれを切らしており、株価は年初来(4日終値時点)で9%下落。時価総額はマイクロソフトを下回った。5日は一時5%を超える下落となっている。
ハンティントン・プライベート・バンクのシニア株式アナリスト、デービッド・クリンク氏は「アップルがいかに長期にわたってキラープロダクトを出していないかに注目が集まっている」と指摘。「アップル株の保有者にとって、エヌビディア株などの動向を目の当たりにするのは明らかに辛いはずだ」と述べた。
アップルのEVからAIへの方向転換は、主力製品「iPhone(アイフォーン)」の売れ行きが低迷し、中国での販売台数が今年最初の6週間に前年同期比で24%減少する中での動きだ。ここ数年で最大の目玉商品である複合現実(MR)ヘッドセット「Vision Pro(ビジョン・プロ)」が有意な形で売上増に貢献するのもまだ先のことだろう。
アップルのiPhone、24年初めの中国販売24%減-シェア4位に後退
ウォール街ではアップルに対する懐疑的な見方が強まっている。 ゴールドマン・サックス・グループはアップルを「コンビクション(強い買い推奨)」リストから除外。エバコアISIも戦術的アウトパフォームリストからアップルを外した。
アップルのEV撤退は広く歓迎されてはいるものの、アナリストが期待しているのは同社が独自の生成系AI製品をリリースすることだ。サムスン電子はAI機能を搭載した旗艦スマートフォン「ギャラクシー」の新機種を発表している。
ウェイブ・キャピタル・マネジメントのチーフストラテジスト、リース・ウィリアムズ氏は「サムスンはすでに生成系AIスマホで多くの好意的な話題を集めているが、アップルにはまだそれがない」と指摘。「アップルには現在の相場を勢いづけている要素が一部欠けており、そのために少し出遅れている」と語った。
アップル株の強気派は、同社のAI強化で投資家は忍耐強くあるべきだと話す。メリウスのアナリスト、ベン・ライツェス氏は、新たなAIサービスがiPhoneの買い替え需要を促し、2025年に「スーパーサイクル」が始まるとみている。
同氏は「今は深呼吸する時だ」とし、現在世界で使用されているアップルの端末数22億台のうち99%は「アンドロイド端末に乗り換えることはないのだから、『復活』の公算は大きい」と述べた。
また長期投資家は、アップルにとって後発であることは今に始まったことではないと語る。
ウェルス・アライアンスのロバート・コンゾCEOは、AIサイクルの初期段階でアップルを除外するのは間違いだと指摘。「アップルは自分たちが最も得意とすることをしている。AIブームを生かして自社製品をどう位置づけるか、腰を据えて構えているようなものだ」と話した。
アップル株、下げ止まらず-トレーダーが今後注目するのはこの水準
トレーダーは、5日に心理的に重要な節目を割り込んだ米アップル株に注目している。同社株は今月、テクニカル上の調整局面に入った。調整局面入りは昨年8月以来。
先週に180ドルの下値支持線を維持できなかったアップル株は、5日の取引時間中に170ドルを下回る場面が何度かあった。ストラテガス・セキュリティーズの上場投資信託(ETF)・テクニカル戦略担当マネジングディレクター、トッド・ソーン氏によると、この水準を割り込み、そのままそこにとどまった場合、昨年10月の安値165.67ドルへの下落が視野に入る可能性があるという。
ソーン氏は電話取材に対し「アップルは最も影響力のある銘柄の一つであるため、売られ過ぎた後、短期的にここから反発することもあり得る」とした上で、「ただ、同社株のトレンドはあまりにも大きく悪化しているため、トレーダーは依然として180ドルでの頭打ちを予想している可能性がある」と述べた。
昨年12月に上場来高値を付けたアップル株は、今年に入り12%近く下落し、時価総額3000億ドル(約45兆円)余りが消失した。この結果、アップルはマイクロソフトに米企業で時価総額首位の座を奪われた。一方、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コムなど一部の大手ハイテク銘柄は上昇基調が続いている。
アップルはアプリストア「アップストア」に対する規制当局の監督、中国での販売減少、成長見通しに対する投資家の懸念など、多くの問題に直面している。
言うまでもなく、空売り投資家はアップル株に飛び付いている。データ分析会社S3パートナーズによると、2月の株式市場のショート(売り持ち)ポジションでアップルは2番目に利益が大きく、含み益は約6億600万ドルだった。
テスラ成長ストーリーに疑問符、2日間で時価総額760億ドル失う勢い
米電気自動車(EV)メーカー、テスラの成長ストーリーに対する懸念が再燃している。中国とドイツからマイナスの材料が相次ぎ、ここ2日間に時価総額760億ドル(約11兆3900億円)が吹き飛ぶ勢いだ。
4日の取引では、2月の中国出荷台数が約1年ぶりの低水準に落ち込んだことを嫌気して7.2%急落。5日も一時5.6%まで売られた。
蔚来汽車(NIO)が示した納車台数見通しが弱かったことに加え、ドイツにあるテスラ工場近くの高圧鉄塔に放火の疑いがあり、生産停止に追い込まれたことも株価の重しとなった。さらにテスラ担当アナリストの少なくとも1人が、欧州11カ国のデータと中国の最新情報に基づき、1-3月(第1四半期)の出荷台数予想を引き下げた。
チューダー・ピッカリング・ホルトのアナリスト、マット・ポーティロ氏は「世界各国のデータが今年1ー2月に見られたような低調な滑り出しを裏付けるようであれば、決算に向けて予想が下方修正され始めても驚きではない」と述べた。
ポーティロ氏は現在、今年1-3月の出荷台数が46万6700台の水準に向かっていると予想。ブルームバーグがまとめたデータによると、アナリストの平均予想47万4200台となっている。
テスラ株にはさらなる下げ余地があるかもしれない。投資家の関心は人工知能(AI)関連銘柄へと向かっており、テスラはハイテク7社で構成する「マグニフィセント・セブン」の中で最も割高だ。予想株価収益率(PER)は58倍で、AIブームをけん引するエヌビディアの34倍を上回る。
バーンスタインのアナリスト、トニ・サコナギ氏は4日付けのリポートで「テスラ株価は今年に入りアンダーパフォームしているが、買いのきっかけは見当たらない」と記述。2024年と25年の成長は「微々たるもの」になるだろうとし、「テスラの成長ストーリーに疑問符が付いている」と指摘した。
この記事の考察
3月に入ってアップルとテスラの下落が大きくなってきた。
共通している点は中国市場である。
アップルのiPhoneは中国の共産党内での使用が禁止されている。一般庶民はまだ使っているがいずれ使用禁止になる公算が強い。
中国とアメリカの貿易戦争、AIに関わる技術漏洩の問題もありアップルは中国市場から撤退することになるだろう。
2月16日のCNNの記事にも出ていたがバークシャー・ハサウェイがAPPLの株を1%売却したこともこのことと関係している。
【ニューヨーク(CNN) 米著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが2023年10~12月期にアップル株を1000万株売却したことが分かった。これは同社が保有するアップル株の約1%に当たる。
アップルはバークシャーの主要保有銘柄で、保険や鉄道、エネルギー事業と並ぶ「ビッグ4」の一つとして知られる。バフェット氏は、このビッグ4がバークシャーの価値の主要なけん引役になっていると語る。】
TSLAに関してはEVブームが下火になった事が最大の要因だろう。
しかし、イーロン・マスクの考えている最終的な目標はテスラモーターズではない。
テスラモーターズは単なる通過点であると彼は言っている。AIを搭載した自動運転はまずトラックで実現することになるだろう。
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