2024 4月5日 経済 NEWS

投資

【米国市況】株下落、地政学リスクで国債に逃避買い-151円30銭台

by Bloomberg

4日の米国株式市場は下落。地政学リスクの高まりから終盤にかけて売りが膨らんだ。

S&P500種は値を消す展開。イスラエルのネタニヤフ首相がイランとその代理勢力に対して対抗措置を講じ、イスラエルに危害を加えようとする勢力を痛めつけると発言したと伝わった。これを受けて、米国債には幅広い年限に買いが入った。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁がインフレ鈍化の進展が滞る場合、年内の利下げは必要なくなる可能性があると発言したが、債券買いの流れは変わらなかった。

【FRB高官発言】今年は利下げ実施しない可能性も-カシュカリ総裁

  市場は5日に発表される3月の雇用統計にも注目している。ブルームバーグのエコノミスト調査によると、非農業部門雇用者数は健全な伸びが続くが、賃金の伸びは緩やかになると予想されている。雇用者数は4カ月連続で少なくとも20万人増となる見通し。平均時給は前年同月比4.1%増の予想で、実際にそうなれば2021年半ば以来の小幅な伸びとなる。

朝方発表された先週の米新規失業保険申請件数は1月以来の水準に増えた。足元で増加傾向にある人員削減の動きと整合する内容で、米利下げの根拠を強める可能性はある。

米失業保険申請、1月以来の高水準-人員削減の増加傾向と整合 (1)

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は「これまで通り、雇用統計が最終的な決定権を握る」と指摘。米金融当局に利下げを遅らせる理由を与えず、かつ労働市場の深刻な悪化を示唆しない『ゴルディロックス』的な数字を投資家は求めているだろう」と述べた。

22Vリサーチが実施した調査によると、3月の雇用統計に対する市場の反応について明確なコンセンサスは得られていない。調査対象の投資家のうち、29%は「リスクオン」と予想。32%が「リスクオフ」、39%が「まちまち・限定的」と回答した。

  22Vリサーチのデニス・デブシェール氏は「雇用統計の中では雇用者数に代わり、平均時給が最も重要なデータとなった」と指摘。「これはインフレが投資家の最大の関心事であることと一致するが、雇用者数も投資家は注視している」と述べた。

  ウルフ・リサーチのクリス・セニェック氏は米雇用統計について、コンセンサス予想との乖離(かいり)が小幅であっても市場は反応する可能性が高いとの見方を示す。

一方で「今年25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げ3回との先物市場の予想を持続的に変えるには、大幅な上振れまたは下振れが必要だと当社ではみている」と述べた。

米国債

  米国債相場は上昇。地政学的リスクが意識され、終盤にかけて買いが優勢となった。

  ネタニヤフ首相の発言が伝わると原油価格が跳ね上がったが、米国債の重しとはならなかった。リスクオフから株売りが膨らむ中で、むしろ国債の妙味が増した。

  3月の雇用統計も注目材料だ。BMOキャピタル・マーケッツのベイル・ハートマン、イアン・リンジェン両氏が実施した調査によると、統計発表後に国債が売られた場合には、投資家が買いを入れる方向に強く傾いていることが分かった。

  雇用統計発表後に国債が下落した場合、国債を購入するとの回答は57%に上った。一方、国債が上昇した場合には、約3分の2の投資家が「何もしない」と答えた。

為替

  ニューヨーク外国為替市場では、中東情勢の緊迫化を受けてブルームバーグ・ドル・スポット指数が当初の下げをほぼ埋めた。新規失業保険申請件数が予想以上に増えたことに反応し、早い時間には約2週間ぶりの水準に低下していた。

一方、円は対ドルで上昇。安全資産に資金がシフトする中で、一時は0.4%高の151円12銭まで買われた。終盤にかけて米国債利回りが低下したことも円買いを誘った。午前の取引では151円77銭まで売られる場面があった。

  日本銀行の植田和男総裁は朝日新聞とのインタビューで、2%の目標達成に向けた確度がさらに高まれば追加利上げを検討するとの考えを表明。夏から秋にかけて目標達成の可能性が高まっていくと述べた。

  一方、インフレ率が予想外に低下したことで売られていたスイス・フランも終盤にかけて切り返した。

スイスのインフレ率、予想に反し低下-サプライズ利下げを正当化

原油

ニューヨーク原油先物相場は5日続伸。北海ブレント原油は節目の1バレル=90ドルを突破した。中東情勢がエスカレートする兆候を背景に買いが続いた。

  イスラエルのネタニヤフ首相は安全保障の閣議で、イランとその協力者に対し作戦を実行し、それを阻もうとする勢力に損害を与えると表明。バイデン米大統領はネタニヤフ首相と電話会談し、イスラエルの戦争を米国が支持するかどうかは、民間人保護に向けたイスラエルの新たな措置次第だと述べた。

  CIBCプライベート・ウェルスのシニア・エネルギー・トレーダーのレベッカ・バビン氏は「バイデン大統領とネタニヤフ首相の電話会談がエスカレートした発言に終わったことで、原油はさらなる地政学的リスクを織り込んでいる。イスラエルがシリアのイラン大使館を攻撃したことに対して、イランが報復すると市場は予想しており、緊張が一段と高まると懸念されている」と語った。さらに、原油供給が直接影響を受ける可能性は低いが、「未知の恐怖」がトレーダーを警戒させていると続けた。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は前日比1.16ドル(1.4%)高の1バレル=86.59ドルで終えた。ロンドンICEの北海ブレント6月限は1.5%上昇し90.65ドル。

  金スポット相場は8日ぶりに下落。前日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を好感して買いが入り、最高値を更新した後、下げに転じた。

 金スポットは一時、1オンス=2304.96ドルまで上昇した。議長は「年内どこかの時点で」利下げを開始するのが適切になる可能性が高いとの認識を改めて示した。

パウエル議長、さらなるデータ精査の「時間ある」-利下げ前に (2)

UBSグループのアナリスト、ジョニ・テベス氏は金について、ポートフォリオの分散と不確実性へのヘッジを求める投資家を引きつけていると指摘。「地政学的リスクが根強く、今年はボラティリティーとマクロの不確実性が高まる公算があることから、戦略的配分を構築する可能性は高いと思われる」と述べた。

  それでも、金の上昇に戸惑う市場関係者もいる。特に米国の実質金利が高止まりししているためだ。高い実質金利は通常、金にとって逆風となる。

  キャピタル・ドット・コムのシニアマーケットアナリスト、カイル・ロッダ氏は「このような状態が続くのであれば、突然の下落や調整があると考えるのは当然だ」と語った。

 ニューヨーク時間午後2時37分現在、金スポット相場は0.1%未満下落の2299.21。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は6.50ドル(0.3%)下落し2308.50ドルで引けた。

この記事の考察

昨日のアメリカの株価は上昇で始まった。
しかし、地政学リスク、イスラエルのネタニヤフ首相がイランとその代理勢力に対して対抗措置を講じ、イスラエルに危害を加えようとする勢力を痛めつけると発言したと伝わった。というニュースがでた途端に急落に転じた。

国債が買われ、原油、金が上昇した。

最近は銀、銅の価格も上昇している。

コモディティ価格が上昇トレンドに入っており、またサプライチェーン混乱によるインフレ再燃のリスクが高くなってきた。

米ドルは他の通貨に対していぜんとして強く有事の米ドル買いとなっている。

これらを総合するとアメリカ政府の思惑通りに事は進んでいるように感じられる。

FRB,アメリカ政府は米国債を売りたい。そのためには利回りが高い状態を維持したい。

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